seaching for banana flower
in South India


*バナナフラワー編

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 ここはインド南部ケララ州のとある施設。150エーカーもあるという広大な敷地内には(1週間毎日散歩しても全貌はつかめなかったぐらいの広さ)400種を超える薬草やハーブ、果 樹、スパイスが栽培され、ブーゲンビリアやハイビスカスが鮮やかな色を添えて、トロピカル気分を盛り上げている。

 1年中緑が絶えないこの熱帯地方に来たのは、ちょうど今がバナナの花の季節と聞いたからである。

 フィリピンやインドネシア、南インドを含む熱帯地域にはバナナの花を食べる習慣があると知り、エディブルフラワー研究家としては是非味わっておきたいと思っていた。そして、偶然にこの植物園を保有する施設を紹介され、バナナの木はあるか、花はいつ咲くのか、本当に現地の人はそれを食べるのかなどと問い合わせたところ、『夏に移り変わる頃に咲き始める』という返事。しかもそこで料理をして食べさせてくれるというのだ。インドの季節の変わり目は3月から4月にかけて。ということは、今。この時期を逃すまいと、早速東京から14時間かけてやってきたのであった。

 到着した日に、オーナーであるアブドゥーラさんと挨拶をかわすと、「これがバナナの花だよ。」と白いビニール袋を渡された。私の到着に合わせて、今日の午前中に植物園から採ってきておいてくれたのだ。ずっしりと重い袋の中にはベルベットをおもわせる灰色がかった高貴な深い赤紫色の、均整のとれた円錐形のものが大小合わせて4つ入っていた。大きいものは長さが20センチくらいあり、さわってみると、指が押し返され、中身がぎっしり詰まっているようだ。

 タケノコのような外側の蕚を1枚はがすと、根元にはベージュに輝く細長い花が2列にびっしりと並んでいた。意外と早い対面 に、はるばるやってきた甲斐があったと、初めて見るこの5センチ程の花に感動していると「下の方に蜜があるから吸ってごらん。」と言って、アブドゥーラさんが1本抜き取り、差し出してくれた。この一本一本がやがて見慣れている黄色いバナナの実となり、房となるところなのだ。 最初に吸った花が甘く感じられず、バナナにしたら二房分ぐらいの蜜をあっという間に吸ってしまった。

 翌日は庭師のハーマンさんに植物園を案内してもらう。植物園とは言っているが、もともとの自然がそのまま活かされている場所を選んで作ったところである。「毒蛇はいないですよね?」と確認した後、生い茂るジャングル(といっても水をまいたり、収穫をするために人が通 れるようあぜ道がつくられている)に入っていく。名前と効能を説明してくれるハーマンさん。赤いコショウの実、ホーリーバジルなどはわかるがほとんど見たことのない植物ばかり。途中、キッチンで使うためといってカレーリーフを摘んでいた。

 木に咲くバナナの花を写真に撮る。どれも同じに見えるのだが、この植物園の中には何種類ものバナナの木があるそうだ。マンゴやパパイヤ、この地方ならではのジャックフルーツ、カシューアップルもあり、その場で次々と採っては味見と称して平らげていく。これらのフルーツの写 真も近々公開予定。

  

banana0  さて、いよいよ調理。1枚1枚の蕚の内側にはこのように花が勢ぞろい。
banana1  メニューはカレーリーフやマスタードシードといったスパイスを加えたココナッツオイル炒め。
banana2  紫色の蕚と花は柔らかい芯が出てくるまですべて取り除く。
banana3  バナナフラワーといっても、実際に食用となるのは花の芯の部分。
banana4  輪切りにした後、さらに細かく切る。切り口はタケノコではなく玉 葱のよう。
banana5  切り口から出る白い液体とアクを抜くため、ターメリックを少々まぶし、5分から10分くらい水にさらす。ターメリックは応用範囲の広いスパイスだが、アク抜きにも使われるとは新しい発見。
  水をよくきり、スパイス、ハーブとともに炒める。
出来上がり2  右側ができあがり。左側は青いバナナのカレー。
出来上がり2  やや渋みがあり、ふきのとうのような苦味も感じられたが、スパイスが旨味を引き出し、あとをひく大人の味だった。茹でてサラダに入れたり、天ぷら、スープの具としても利用されるそうである。
バナナのつぼみの栄養と成分表


text/photo by t.kuki

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第2弾:アーティチョークを読む
第3弾:
南フランスの香り〜花のアロマ編を読む

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